「ついに……辿り着いた」
熊野の森の奥で、その光景を目にした瞬間、言葉が漏れた。

植林された杉は倒れ、朽ち、地面から幹にかけて苔が張り付いている。
辺り一面、緑しかない。

太古の森のようにも見える。
それとも、地球ではないどこかか。

不時着した何かが、ここに落ちたまま放置されているような、
そんな気配さえ感じる。

こういう場所を見つけてしまうと、人物を入れたくなる衝動を抑えきれない。
レンズをポートレート用に付け替え、誰かが立つことを想定してフレーミングを探る。


やはり、いい。
この中に人物が入れば、説明のいらない画になる。

この場所を「KUMANOS(クマノス)」と呼ぶことにした。
勝手に名付けただけだ。
もっというと惑星ソラリスだとか、ロケット・カイロスだとか、そんな言葉が頭をよぎったからだ。

帰郷してからというもの、特別な場所を求めて、ひとり熊野の奥へ入り続けてきた。
写真家として、そういう光景を探し続けているから。

クマノスにたどり着いた理由ははっきりしない。ただ、足が向いた。
熊野の秘境の、さらに奥。クマノスはその先にある。
手前のエリアだけでも広く、慣れているはずの自分でも、しばらく立ち尽くした。

帰り道、木々の隙間から太陽が覗いた。
正直、少しほっとした。
日が長い季節で助かった。
今回は道中すべてを撮影したから時間がかかったが、クマノス直行なら三十分ほどで辿り着けるはずだ。
たぶん、また来る。
その日の夜、kumanokodo.net のドメインが取れた。
偶然かもしれない。
それでも、この場所には何かある気がしている。
太古の森の奥に現れた「KUMANOS」は、異世界のようだった。 緑と苔と朽ちた幹だけが支配するその場所は、見慣れた熊野古道の風景とは明らかに違っていた。 剥き出しの自然が残るその深淵を、一つの表現の舞台として提示したい。
新宮市、那智勝浦町、本宮町、そして三重県熊野市。 和歌山と三重にまたがる熊野地方で撮影を続けていると、芸術や感性を大切にする表現者と出会うことがある。 KUMANOSは、そんな意志ある表現者を受け止めるための装置だ。
写真家 kumanokodonet は、フィルムカメラを通して場所と人の共鳴を記録している。 和歌山県観光連盟「Visit Wakayama」等への写真提供をはじめ、行政、企業、アート・ファッション雑誌等の制作を請け負う。
新宮市・本宮町・熊野市周辺で、この舞台に立つことに興味のある表現者は、 「熊野地方・熊野古道でのポートレートモデル募集」 を読み、その門を叩いてほしい。


