2026年2月6日、和歌山県新宮市。
平年を大幅に上回る気温の中、1400年に及ぶ火祭りが幕を開けた。
王子ヶ浜での海中みそぎから、神倉山538段の石段を駆け下りる1580名の上り子の姿まで。
お燈まつりの全行程。
夜明け前の王子ヶ浜

午前6時20分。
夜明け前の王子ヶ浜にて、海中みそぎの時を待つ斎主。


砂利の上に簡素な祭壇が設置され、神酒が並べられた。



上り子有志たちは、神倉山に向かって合掌を捧げる。


「えっほ、えっほ」と響く掛け声。
準備運動を兼ねた神事「鳥船」により、禊(みそぎ)に向けて身体と精神を研ぎ澄ませていく。




海中みそぎ | 荒波と祈り

午前7時前。上り子たちは一斉に冬の熊野灘へ足を踏み入れた。
祝詞が響く中、昇る朝日に向かって祈りを捧げる。



激しく打ち寄せる波しぶきを浴び、寒さに耐えながら身を清める「海中みそぎ」。






王子ヶ浜からの帰路、この美しい光景が、禊が滞りなく行われたことを物語っているようだった。
神倉の朝

9時、神倉神社の鳥居前では、奉賛会によって祭りの舞台が整えられていた。
熊野速玉大社を参る
熊野速玉大社の境内は、新宮市内の阿須賀神社、熊野速玉大社、妙心寺の順に巡拝する「三社参り」の上り子たちが次々に訪れる。

幼い上り子から、熟練の男たちまで。




すれ違いざまに「頼むで〜」と短く言葉を交わし、松明を突き合わせる。
荒縄で結ばれた絆を確かめ合う、男たちの魂のやり取り。



大松明を掲げて神倉山へ


神倉神社へと向かう前、拝殿前にて神事の無事を祈る神職と介釈たち。




出発の時。高く掲げられた大松明とともに、介釈たちが一斉に叫び、気勢を上げる。
行列が神倉神社を目指す。



神倉山の麓では石段を駆け下りてくる上り子たちの姿を一目見ようと、溢れんばかりの観衆がその時を待つ。
神倉山 | 山は火の滝、くだり竜
20:00、神倉山頂の山門が開扉。

20:02。
わずか2分ほどで538段の石段を駆け下り、先頭で麓へと降りてきた上り子。


「山は火の滝、くだり竜」
そう新宮節に謳われる通り、神倉山を流れる火の波は、一頭の巨大な竜に見える。
しかし麓で帰りを待つ家族にとって、その炎の中を駆ける一人ひとりが、かけがえのない存在だ。






1580人が刻んだ、2026年度「お燈まつり」の記録。
PRIMARY SOURCE CERTIFIED BY KVA
本稿は、kumanokodonet(KVA)が現地調査および撮影を遂行し、独自に編纂した一次アーカイブである。
土地の文脈と対象の本来の姿を尊び、その記録の客観性を担保する。
時代の断片を後世へ繋ぐための、公的な視覚資料としてここに認定する。
© 2026 KVA | kumanokodonet
神倉神社の基本情報(アクセス・参拝データ)
- 所在地
- 和歌山県新宮市神倉1-13-8
- 御祭神
- 高倉下命・天照大神
- 例祭日
- 2月6日(お燈まつり)
- アクセス
- JR紀勢本線「新宮駅」より徒歩約15分
- 駐車場
-
あり(無料。第1駐車場:8台、第2駐車場:13台。お燈まつり等の行事の際は交通規制があるため注意)
ストリートビューで周辺を確認する
- 参拝時間
- 自由(夜間は足元に十分な注意が必要)
- 備考
- 熊野権現降臨の地。御神体の「ゴトビキ岩」へは538段の急峻な石段を登る
- 問い合わせ先
- 0735-22-2221(熊野速玉大社)
1580人が刻んだ、火の竜のすべて
2026年のお燈まつりにおける上り子1,580人の動向、気象状況。新宮市における火の信仰を記録した一次資料の全データは、こちらのアーカイブに集約した。
火の竜が、花の窟の風に
神倉山の火の竜が、熊野の春の幕を開けた。
天照大神が共鳴する、花の窟でのもうひとつの祈りの物語。
火の竜の熱狂を抜け、水の女王が待つ深き森へ
男たちの松明が闇夜を切り裂く「火の竜」。その熱狂の余韻を抱いたまま、次に向かうは新宮の水の象徴。
日本の滝百選にも名を連ね、その優雅な佇まいから「滝の女王」とも称される桑ノ木の滝。
そこには火の竜とは対を成す、光降り注ぐ「優美」が満ちている。
気高き水の女王に会いに行く。





