
「何をしに来た?」
眼前に立ちはだかる二本の巨樹が、そう問いかけてくるようだ。
ここは山の頂に近い、熊野の神聖な森。
日中でも差し込む光はわずかで、厳粛な空気が、足を踏み入れる者を選別しているように感じられる。
覚悟のない人間は、立ち入ることすら許されないだろう。

一歩足を踏み入れば緑豊かな大自然。
いかに熊野といえど、ここまで豊かな森は稀有だ。

岩石のように見えるこれ、じつは巨大な倒木の根っこだ。

こんなおばけキノコまでいる。

頂上にたどり着いた。
白いドレスを纏った妖精がひとり、ダンスを踊っていそうな、超神秘的な広場が目の前に広がる。


なんと、折れた巨木が新しい生命を宿している。

「よう」とこちらに挨拶をしているように見える。

大好きな光景だ。

個性的な巨木たちを撮り終え、満足して帰路につこうとしたとき、
ふと、この森の“主(ぬし)”に出会っていないことに気づいた。
これまでに見た巨樹のどれかが主だったのか。
いや、そこまでの存在感を放つものはいなかった。
「また主を求めて、来ることになるのか」
そう考えながら歩を進めていた、その帰り道——

いた。
森の奥に、とてつもない気配を放つ存在が。

「熊野の女王か……」
対峙した瞬間、理屈より先に、本能がそう告げてきた。
巨大で、優美で、そして圧倒的だ。

その存在感は、熊野三山にも引けを取らない。
これほどの存在が、人知れず森の奥深くに立っている。
その事実だけで、熊野という土地の底知れなさを思い知らされる。

女王の足元には、彼女に劣らぬほどの巨木が倒れていた。
まるで、死してなお女王を護る側近のように。
いつか、この女王にも倒れる日が来るのだろうか。
そう思うと、胸の奥がざわついた。
その時が来る前に、どうしてもこの場所でポートレートを撮りたい。
誰も見たことのない、神聖な一枚が撮れるはずだ。
そのためには、女王に負けないオーラを持つ“熊野の女神”を見つけなければならない。
必ず見つけて連れて来る。
女王、あなたが倒れるその日までに。

熊野の森の奥で見つけた「熊野の女王」と対峙した瞬間、理屈より先に本能が反応した。 圧倒的な存在感を放つその巨樹は、熊野三山にも匹敵するほどの気配で、森の主として静かに在る。 その光景を前に、単なる記録ではなく、物語そのものを写したいという衝動に駆られた。
この圧倒的な女王の隣に立つに相応しいのは、被写体を超えた存在、すなわち「熊野の女神」だ。 新宮市、那智勝浦町、本宮町、そして三重県熊野市など、和歌山と三重にまたがる熊野地方の深部で撮影を続けていると、 芸術や感性を大切にする表現者との出会いがある。 その中から意志ある女神を見出し、女王のもとへ。それが、この土地を撮り続ける写真家としての使命だ。
写真家 kumanokodonet は、世界遺産・熊野古道やその周辺エリアを拠点に、フィルムカメラでポートレート制作を続けている。 和歌山県観光連盟「Visit Wakayama」等への写真提供実績があり、行政、企業、アート・ファッション雑誌等の制作相談を受け付けている。
新宮市・本宮町・熊野市周辺(尾鷲市などの紀伊半島東部を含む)でポートレートに興味のある方や、 自然と対等に響き合う表現を求める方は、 「熊野地方・熊野古道でのポートレートモデル募集」 を確認した上で、対話を始めてほしい。


