「熊野ポートレートアーカイブ(Kumano Portrait Archive / KPA)」の記念すべき第一弾として、新宮市の「桑ノ木の滝」周辺で撮影した人物写真を公開する。
このプロジェクトでは、事前の演出や段取りを一切行わず、現場の光や空気、モデルの呼吸に合わせるインプロヴィゼーション(即興)の撮影をおこなっている。
35mmフィルムのKodak PORTRA 400を用いて、桑ノ木渓谷の緑や清流、桑ノ木の滝の水飛沫の中で、風景と人が交わる瞬間をそのまま捉えた。
時間の経過に沿った15枚の写真を通じて、熊野の自然の中に立つ人の姿を記す。
桑ノ木の滝 水飛沫と光の中で
新宮市の高田川の支流である、桑の木谷川。
その川沿いの遊歩道を15分ほど遡った先にあるのが、日本の滝百選にも選ばれている桑ノ木の滝だ。

周囲を木々に囲まれたこの場所から、今回のプロジェクトは動き出した。

あらかじめ決まった段取りや演出は用意していない。
その場で目にした光の入り方や、風に舞う水飛沫の中で、被写体がどのようにそこに立つか。
その時々の状況に反応しながら、シャッターを切っている。


岩の上で遠くを見つめる横顔や、降り注ぐ光の中で目を閉じる姿など、現場の空気を感じながら撮影した。
桑ノ木渓谷の杉林 木漏れ日の中を歩く
桑ノ木の滝での撮影をおこなった後は、もと来た道をゆっくりと入口へ戻りながら、カメラを向けた。

桑ノ木渓谷は、長らく放置されていた倒木などがきれいに撤去され、整備されたばかりのタイミングだった。

歩きやすくなった川沿いの道を戻りながら、周囲の環境を大切に感じてシャッターを切っていく。
まっすぐに伸びる大木に両手を添えて立つ後ろ姿や、河原に立ってこちらを見つめる姿。


天を仰ぐ視線や、木々の間から光が差し込む小道で振り返った表情など、その場の空気に寄り添うように撮影した。
桑の木谷川の冷たさと相賀八幡神社の鳥居

戻り道の途中で、桑の木谷川の冷たい清流に足を浸しての撮影をおこなった。


その後は、川に架かる吊り橋を渡り、渓谷の中に佇む相賀八幡神社へと向かっている。

苔むした石段の先に立つ鳥居を見上げる後ろ姿、神社が放つ神聖な空気の中で、シャッターを切った。
高田川への切通と入口の小道

神社での撮影を終えた後は、高田川へと続く切通の小道へ。木漏れ日による光と影のコントラストが美しい道の中で、こちらをまっすぐに見つめる姿を丁寧に捉えていく。


高田川の川岸の葉越しに水面を見つめる後ろ姿から、光の降り注ぐシダ植物が群生する入口の小道へ。移り変わる周囲の光景を大切にしながら、桑ノ木の滝での撮影を終えた。
熊野ポートレートアーカイブ 新宮市での試み
今回の桑ノ木の滝周辺での撮影は、熊野ポートレートアーカイブ(KPA)における最初の一歩となる。
ここで試みたのは、事前の演出に頼らないインプロヴィゼーションの撮影であり、35mmフィルムを用いて、その瞬間の光や環境、そして被写体の存在を捉えることだった。
自然の奥深さと、その中に立つ人の姿が交わる瞬間を15枚の写真として残せたことは、このプロジェクトの確かな出発点となった。
特定の誰かを特別視するのではなく、この熊野という地に生きる人々の姿を、これからも記録していきたい。
風景と人が織りなす一次情報の蓄積こそが、未来におけるアーカイブとしての価値を持つと信じている。
新宮市でスタートを切ったこのプロジェクトは、これからも熊野の各地域で続けていく。

