大門坂。夫婦杉と石畳、光が描く平安の幻想。

大門坂の石畳を登る平安衣装の人物 那智勝浦町

大門坂の石畳と杉並木

「まるでジブリやん!」
若い観光客の、その感嘆の声にハッとする。

大門坂をスマホで撮影する男性三人組の後ろ姿

あまりに身近すぎて忘れていたが、目の前に広がるのは、世界遺産・熊野古道「大門坂」の光景だ。

苔むした石畳、樹齢数百年の杉並木。
あらためてその空間に身を置くと、現代の日常とはまったく違う、別世界が広がっている。

霧に包まれた大門坂の石畳

那智勝浦町にある那智大社や那智の滝へ向かう那智山中腹に位置していて、車でもバスでもアクセスは至備だ。そのまま歩いて那智の聖域へ向かうことができる。

夫婦杉と平安衣装

また、大門坂茶屋の平安衣装はこの風景にとてもよく合う。

苔むした石畳に佇む平安衣装と木漏れ日
市女笠を被った平安衣装の女性の横顔

SNS用の写真や、熊野を訪れた思い出として、この平安衣装貸し出しはとても人気があるようだ。

若い女性たちがこの装束のまま、石畳を歩いて那智大社や那智の滝を目指す姿は、現代とは思えない光景でもある。

杉の巨木の間を下る平安衣装の人物
石畳を登る平安衣装の後ろ姿

その後ろ姿は、観光という枠を超えた、一つの「祈りの形」のようでもある。

那智山の記憶と天狗鈴

大門坂を歩くと、かつて中国から訪れた、ある女性を案内した日のことが呼び起こされる。

杉林の隙間から射す木漏れ日

外見が綺麗なだけでなく、内面まで美しいその女性は、被写体のお願いにも快く応じてくれた。

木漏れ日の中で上方を仰ぐリュック姿の女性の横顔

初めての撮影とは思えないほど、降り注ぐ木漏れ日の中に、自身の美しさが最も映える角度を、本能的に見出しているようだった。

光を受けて白く光る平安衣装のベール

那智大社の授与所では、自身のお守りだけでなく、カラス天狗をかたどった土鈴「天狗鈴」を自分のためにも選んで、渡してくれた。
さらに、案内のお礼にと、那智の滝そばの売店でアイスまでご馳走してくれたのだ。

参道のベンチでソフトクリームを味わう女性

彼女からもらった天狗鈴は、独りで撮影に熊野の山奥へ入る際、今もお守りとして必ず携行し続けている。

苔むした岩の上に置かれた「天狗鈴」

熊野古道・那智大社の神聖な加護と、彼女の美徳が、どんな厄災も振り払ってくれると信じて。

大門坂の石畳を登る平安衣装の人物
逆光に透ける平安衣装のベールと光芒(モノクロ)

あの日、大門坂でファインダー越しに見た彼女の笑顔は、一生忘れることはないだろう。

笑顔を見せる観光客

大門坂の基本情報

所在地
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山
アクセス(バス)
JR紀勢本線「紀伊勝浦駅」より熊野御坊南海バス「那智山行き」乗車、「大門坂」バス停下車(乗車約20分)
アクセス(車)
那智勝浦新宮道路「那智勝浦IC」より約10分
駐車場
あり(無料。大門坂駐車場を利用。約100台収容。那智山周辺の散策拠点として非常に便利)
ストリートビューで周辺を確認する
散策時間
大門坂入口〜大門坂頂上まで徒歩約25分。那智山(那智大社・青岸渡寺・那智の滝)を巡る周遊は、休憩・参拝を含め全体で3〜4時間程度が目安
備考
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部。樹齢800年を越える「夫婦杉」が入り口に立ち、苔むした267段の石畳が続く熊野古道の象徴적ルート
問い合わせ先
0735-52-5311(那智勝浦観光機構 NACKT 観光案内所)
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