三重県紀宝町の「神内神社」で撮影した人物写真を「熊野ポートレートアーカイブ(Kumano Portrait Archive / KPA)」として公開する。
前回の新宮市・桑ノ木の滝でのポートレート撮影に続き、今回も事前の演出や段取りをおこなわないインプロヴィゼーション(即興)での撮影だ。
2026年1月に改修がおこなわれ、より神聖な空気が行き渡る神内神社の境内。35mmフィルムのPORTRA 400を用いて、社叢の深い緑や神内川の清流、圧倒的な存在感を放つ大樹や巨石の中で、人と風景が交わる光景を捉えた。
入口から拝殿の奥部へと進む時系列に沿った写真を通じて、この聖域に立つ人の姿を記す。
境内入口の巨石とポートレート撮影の開始
三重県紀宝町神内に位置する神内神社。2026年1月に全面的に改修された境内へ進む手前、駐車場の傍らに巨石がある。

南側約100mに位置する古神殿の入口にある巨石と、この岩は対をなしている。
空から差し込む光を浴び、巨石の前に両手を広げて立つ姿から、この場所でのポートレート撮影は始まった。
清掃された石造鳥居と参道を見つめる後ろ姿
巨石の先には、境内改修の際に清掃された石造鳥居が構えている。

「神内神社」の文字が刻まれた石柱と鳥居が形作るフレームの中央に立ち、これから進む参道の奥を見つめる後ろ姿。
歴史ある建造物と、聖域へ足を踏み入れる瞬間の空気感を、フィルムに収めた。
御神木「安産樹」に佇む
鳥居をくぐってすぐの場所に、鎌倉時代から氏子によって受け継がれてきたホルトノキが立っている。

樹齢七百余年とされるこの大樹は、成長の過程で足元の自然石を巻き込んでおり、その姿から古くより「安産樹」として親しまれてきた。
大樹の根元の隙間に腰掛け、レンズへと視線を向けたところを捉えた。
緑に囲まれた参道にそびえ立つ夫婦杉
杉の木が並ぶ参道を進む。周囲は緑に囲まれ、特有の湿り気を帯びた空気が漂う。

そんな参道の左側に「夫婦杉」はそびえ立っている。
神内川の石段と清流をフィルムに収める
参道の左側には、神内川が並行して流れている。

水辺へと降りていくために整備された石段の構造は、伊勢神宮の御手洗場を彷彿とさせる。
そこに立ち、川面を見下ろす。
35mmフィルムは、神内川の透明感と周囲の様子を、美しく描き出した。
磐座を仰ぐ拝殿への石段
参道の突き当たりに、御神体の磐座を仰ぐための拝殿が姿を現す。

安産祈願として奉納された無数のよだれかけが並ぶ拝殿。
その拝殿への石段の途中で立ち止まり、ふと後ろを振り返った瞬間を収めた。
クスの巨木「蘇りの木」が放つ圧倒的な生命力
拝殿の左側へと進むと、圧倒的な存在感を放つ大樹が現れる。

「蘇りの木」と呼ばれるクスの巨木。根元には大人が一人通り抜けられるほどの空洞があり、古くから「胎内くぐり」の伝承が残る。
数百年の歴史を持つ巨木の生命力と、聖域の光を受ける人物の輪郭を捉えて、神内神社での撮影を終えた。
熊野ポートレートアーカイブ 紀宝町での記録を終えて
太古からの信仰を今に伝える巨大な磐座と、長い年月を重ねてきた大樹が囲む神内神社。
その神聖な空気の中に立つ人の姿。
それらが35mmフィルムを通じて記録されたことは、KPAにおける重要なアーカイブになった。
その地の固有の歴史と人の存在が重なる瞬間を、これからも熊野の異なるフィールドで捉えていきたい。
神内神社の基本情報
- 所在地
- 三重県南牟婁郡紀宝町神内958
- 御祭神
- 天照皇大神、天忍穂耳命、彦火瓊々杵尊、彦火火出見尊、鸕鶿草葺不合尊
- 例祭日
- 11月23日(例大祭)
- アクセス
- JR紀勢本線「紀伊井田駅」より徒歩約20分。または「新宮駅」より車で約10分
- 駐車場
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あり(無料。鳥居付近に約20台分の駐車スペースあり。通常は空いていることが多い)
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- 参拝時間
- 自由(夕刻以降は神内川沿いの足元に注意)
- 備考
- 別名「子安の宮」。社殿を持たず巨大な磐座を御神体とする古代祭祀の原風景を残す。神内神社樹叢(県指定天然記念物)の森に包まれた、安産・子授けの聖域
- 問い合わせ先
- 0735-33-0334(紀宝町役場 企画調整課 観光係)
神内神社 | 巨大な磐座と「安産樹」に宿る祈り
ポートレートの背景にある、太古の自然崇拝を今に伝える古代祭祀の原風景。高さ約100mの巨大な磐座を御神体とし、2026年1月に諸社や案内板が全面的に刷新された紀宝町の神内神社。日本の聖地ベスト100の10位にも選出された崇高な聖域と、岩窟内の三つの御社に刻まれた信仰の歴史。


