和歌山県那智勝浦町の熊野那智大社にて、毎年7月14日に執り行われる「那智の扇祭り (なちのおうぎまつり)」。
「那智の火祭り」の通称でも知られ、日本三大火祭りのひとつに数えられる同社の例大祭。国の重要無形民俗文化財に指定されている。
神仏分離以前の那智山修験の歴史を色濃く残す神事であり、高さ約6mの扇神輿12基を御本社から飛瀧神社 (ひろうじんじゃ) へとお渡しする際、重さ最大約50kgの大松明12本が参道の大石段を乱舞し、その炎で参道を清める。
境内で奉納される那智の田楽 (ユネスコ無形文化遺産) や大和舞、御田植式から、御火行事、扇神輿還御祭まで、当日の神事および奉納演舞の模様を記録した。
大和舞・巫女舞



11:00。熊野那智大社の特設舞台にて、地元の市野々 (いちのの) 小学校の児童9名による「大和舞 (やまとまい)」および「巫女舞 (みこまい)」が奉納される。
大和舞は、少年少女によって舞われる稚児舞。演目は、那瀑の歌を唱える「斎主舞 (さいしゅまい)」、大直日の歌を唱える「巫女舞」、有馬窟および花窟の歌を唱える「沙庭舞 (さにわまい)」の三曲で構成される。装束を纏った児童が、古伝の神楽歌に合わせて舞を披露する。
那智の田楽


11:30。特設舞台にて、国の重要無形民俗文化財であり、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「那智の田楽 (なちのでんがく)」が奉納される。
室町時代から伝わる古式をそのまま継承する伝統芸能。演者は、編木 (びんざさら) 4名、腰太鼓 4名、シテテン (小太鼓) 2名、笛方で構成され、全21節に及ぶ曲目が順次演じられる。所作や衣装、使用される楽器に至るまで、伝統的な様式が厳格に守られている。全曲目を終えるまでの所要時間は約40分間に及ぶ。

2026年の境内には、俳優の原田龍二 氏の姿もあった。
御田植式


12:15。熊野那智大社の拝殿前にて「御田植式 (おたうえしき)」が執り行われる。
木製の牛頭 (ぎゅうとう) を被った牛役をはじめ、カイガやエブリといった古くからの農耕具を持った奉仕者が、笛や太鼓、田植歌に合わせて舞台や境内をめぐる農耕神事。田長 (たおさ) による検分のもと、一連の田植えの動作が演じられる。
式中、牛役の奉仕者が牛の鳴き声を真似ながら参拝者に近づき、場を沸かせる場面も見られる。
扇神輿渡御祭

13:00。熊野那智大社の御本殿前にて「扇神輿渡御祭 (おうぎみこしとぎょさい)」が執り行われる。
降神の儀を経て、十二基の扇神輿に神霊が遷される。蛇の着物に社紋入りの鉢巻を着用した扇指 (おうぎさし) によって担ぎ上げられた扇神輿は、那智の滝を祀る別宮・飛瀧神社への渡御へと出発する。



渡御の行列は、子の使 (ねのつかい) を先頭に、前駆神職、馬扇、伶人 (れいじん)、大松明、扇神輿、神職、総代、随員で構成される陣列を整え、飛瀧神社への参道を進む。
御火行事


14:00。飛瀧神社の参道にて、那智の扇祭りの通称である「那智の火祭り」の由来となる「御火行事 (おひぎょうじ)」が執り行われる。
使役と使受け役が松明の火付場にて点火し、直径約44cm、高さ約1.34m、重さ最大約50kgに達する12本の大松明へ順次火が移される。炎を上げた大松明を抱えた白装束の担ぎ手たちが、御瀧本の参道大石段を上り、渡御してきた扇神輿を迎える。
大松明の炎によって参道が清められる中、乱舞する火と神輿が交差し、石段上で円を描きながら御瀧本へと引き揚げる。
御田刈式・那瀑舞

14:50。飛瀧神社の御瀧本にて「御田刈式 (みたかりしき)」が執り行われる。
熊野那智大社拝殿前で行われた「御田植式」に一連する神事であり、稲の収穫を意味する儀礼。奉仕者が鎌を手に持ち、笛や太鼓に合わせて田刈歌 (たかりうた) を歌いながら巡り、稲刈りの動作を演じる。

14:55。飛瀧神社の御瀧本にて「那瀑舞 (なばくまい)」が奉納される。
日の丸を描いた扇を持った奉仕者が那智の滝に向かって並列し、笛の音に合わせて「御瀧御幸 (おたきみゆき) の歌」を歌いながら舞を披露する。
歌には「けふのでましの あなあら貴と 瀧の流れも さらさらと 塵も残さず 神風ぞ吹く」という言葉が込められており、神々が御瀧へと渡御されたことへの感謝と祈りを表現する。
扇神輿還御・扇神輿還御祭

15:00。御瀧本でのすべての神事を終えた十二基の扇神輿は、飛瀧神社を出発し、熊野那智大社の御本社への還御 (かんぎょ) を開始する。

15:30。石段の参道を上り、御本社の御本殿前に帰着した扇神輿が再び飾り立てられる。「扇神輿還御祭 (おうぎみこしかんぎょさい)」が執り行われ、神霊を元にお戻しする昇神 (しょうしん) の神事をもって、一連の那智の扇祭りの祭典が終了する。
宵宮




例大祭本祭の前日となる7月13日の宵宮では、17:00より「宵宮祭 (よいみやさい)」が執り行われる。
19:00からは熊野那智大社境内の特設舞台にて、篝火のもとで大和舞、巫女舞、那智の田楽が順次奉納される。

舞が奉納される19:00から20:30頃までの時間帯には、別宮・飛瀧神社の那智の滝にてライトアップが実施される。
那智の扇祭り アーカイブ (2019年〜)








熊野那智大社の基本情報 (アクセス・参拝データ)
- 所在地
- 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
- 御祭神
- 熊野夫須美大神
- 例祭日
- 7月14日 (那智の扇祭り)
- アクセス
- JR紀勢本線「紀伊勝浦駅」より熊野御坊南海バス「那智山」行きで約30分、「那智山」バス停下車、徒歩約15分
- 駐車場
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あり (大社社務所下駐車場:約30台。神社防災道路通行料800円が必要。または那智山周辺の民間駐車場を利用)
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- 参拝時間
- 6:00〜18:00
- 備考
- 那智の滝を御神体とする飛瀧神社も同社の別宮。
- 問い合わせ先
- 0735-55-0321
二河の火祭り | 三光山金剛寺 例祭
和歌山県那智勝浦町の三光山金剛寺にて、毎年8月23日に執り行われる「二河の火祭り」。
本堂での採火から裏山での松明投げ、祭礼終了後の境内の様子まで、当日の経過を記録。
お燈まつり | 神倉神社 例大祭
和歌山県新宮市の神倉神社にて、毎年2月6日に執り行われる「お燈まつり」。
早朝の海中みそぎから三社参り、大松明の行列、538段の石段を駆け下りる上り子の姿まで、当日の全容を記録。




