桑ノ木の滝(Kuwanoki-no-taki Falls):新宮市相賀・桑ノ木渓谷に響く「日本の滝百選」の鼓動
和歌山県新宮市相賀に位置する「日本の滝百選」、桑ノ木の滝。高田川支流の奥深く、相賀八幡神社の社叢(しゃそう)から続く森に守られた、水の聖域。中判デジタル FUJIFILM GFX とフィルムの階調を使い分け、岩肌を伝う湿潤な空気や、光を湛えた水面の揺らぎを精緻に捉える。台風の爪痕をも包み込む、新宮市が誇る水と森のアイデンティティ。写真家 kumanokodonet が、その視線で記録し続ける「熊野の真実」の一端をここに公開する。
桑ノ木渓谷。フィルムに写る、水と光
あぁ、もう何度訪れただろう。通い慣れた道すがら、そう呟く。

入口の案内看板に記された「Kuwanokidani-gawa River」という二重表記。
「桑の木谷川川かよ?」などと森の中で独りほくそ笑む。
その苦笑いを、この渓谷の動物たちに見られたかもしれない。
桑ノ木の滝は、アクセスの良さもあり、風景撮影からポートレートまで頻繁に足を運ぶ場所のひとつ。

気軽にリフレッシュできる聖域。
だが、近年の台風の影響もあり、その道中が荒れていることも少なくない。

倒木が続く遊歩道を歩むたび、熊野の自然が持つ、計り知れない脅威を思い知らされる。

自分が帰郷した頃の道は、整備されたばかりだったようだ。
「ここは熊野の仁淀川と呼ばれているんだよ」
そう誇らしげに語ってくれたあの時の老人。
たとえ道が荒れ果てようとも、この森の魅力が失われることはない。
台風の爪痕を越えて。桑ノ木の滝の優美な姿

歩いてわずか15分。
それだけで、日本の滝100選にも名を連ねる名瀑に辿り着ける。
「桑ノ木の滝」
落差21メートル。岩肌を滑るように落ちる水は、どこまでも優美で、どこまでも荘厳だ。
こんな大自然がすぐそばにあることに、感謝するほかない。

帰り道も、この森は楽しませてくれる。
ふと足元に目を向ければ、小さな奇跡のような、ハート型の切り株。





渓谷を跨ぐ橋、光を湛えた切通し、そして驚くほど透明な水。
そのどれもが、桑ノ木渓谷を構成する大切な断片。

撮影を終え、出口へと続く小径。そこが何より絵になる。
桑ノ木の滝に来るたびに、ついシャッターを切ってしまう。

孤高の撮影。kumanokodonetが選んだ道

桑ノ木の滝へ来ると、あの日を思い出す。
写真家を志す二人の女性と、女優を夢見るモデル。
彼女たちを案内し、共にこの森に分け入った日のこと。
撮影を終えてもなお、高揚し、次の場所を目指す。
だが、その熱量についてこられたのは、自分一人だった。

次の場所で、彼女たちがシャッターを切ることはなかった。
モデルも疲労を隠せず、ただそこに立ち尽くしている。
真剣にファインダーを覗き続けていたのは、自分だけ。
ようやく「撮影」が面白くなってきたという矢先の、絶望的な温度差だった。
それ以来、誰かと写真活動をすることは、やめにした。
表現に対する熱量の乖離を一度でも感じてしまうと、もう一緒にはいられない。
歩調を合わせるためにシャッターを止めるくらいなら、自分は迷わず「孤高」を選ぶ。
それでもこの熊野のどこかに、いつか自分と同じ熱量で立ち続けられる誰かが現れるのを、今も願っている。

桑ノ木の滝を紡ぐ、もう一つの感性
この桑ノ木の滝がもつ魅力に、惹かれた人がいる。
新宮市の地域おこし協力隊員として、桑ノ木の滝の価値をSNSで発信する。
その試みはkumanokodonetとはまた違う視点で「桑ノ木の滝」の魅力を紡いでいく。



